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水彩画紀行  スペイン巡礼路 ポルトガル 上海、蘇州   カスピ海沿岸からアンデスの国々まで

水彩画紀行 スペイン巡礼路 ポルトガル 上海、蘇州   カスピ海沿岸からアンデスの国々まで

カスピ海の夜の出会い

コーカサス地方は、ぽかぽかと暖かい陽気の日だった。

仕事を終えて広いホテルの部屋でメールをチェック後いつものように一眠り。

この一眠りがスペイン以来の習慣。とても気持ちがいい。

8時ごろいつも目覚める。8時とは言え、サマータイムのこちらはまだ明るい。

この日が暮れる前の戸外でのしばしの明るい時間が欧州の素敵な時間。

会社で真っ暗になるまで働いていた大和の民の時は知らなかった。

ものみな黄昏の中で輝き、約束の場所で出会った二人連れが

今夜のプランに頬を寄せる頃。

私は、さびしくひとり一目散で、いつものグルジア料理店に。

鳥のあばら肉に切り込みを入れた大きな塊りが、そっくり

煮込んである鳥なべ。

ボルシチよりうまみのある肉スープ。

どれでもおいしかろうと読めないメニューで勝手に選んでいく。

そして、腹くちくなれば地下のカフェクラブを探訪開始。

誰に出会うかわからない楽しみの時。

歩いたことのない夜の路地をやみくもに歩き、とある地下のカフェバーを見つけた。

四角のカウンターに多国籍の客がしずかに飲み語っている「クラブ ユニバーサル」

隣にいたの欧州系の顔はオーストラリアの医療機関のインテリだった。

話してみると、シンガポールに住んでいて、今同じアスコットロッジにいる旅の人。

モスクワから帰ったばかりというので、

毎年5万人が行方不明か闇に殺害されている都市ですねというと、

目の前で、某企業の重役が銃撃されて殺されたのを見てきたと言う。

経済の40%が税金を払わないマフィアの闇経済とうわさされるソ連の末期的症状。

「オーストラリアは自然保護が徹底していて、川で泳ぐ人間がワニのえさだそうですね」

と言うと、海でおよいでも鮫の餌になると笑っていう。

「北半球が核戦争で全滅しても、最後まで生き残れるのは島国のオーストラリアでしょう」と言うと

そうかもしれないと笑っている。

白豪主義のオーストラリアは、黒人パワーに最近押され気味。

今の大統領は ホワイト? ブラック? と聞くと、

ホワイトだけどね、保守的で困っているという。

アジアの国とビジネスしようとするのを嫌っていてやりにくいんだと。

その夜、カウンターを見渡すと、かなりの美男美女がいた。

話しながら順に描いていくと、見にきてスケッチブックを持っていって

恋人に楽しそうに見せている。

ひげの典型イスラム風美男といった顔を描いてみるとなるほど

ひげが加えるとハンサムがいっそう引き締まる。

フセインがハンサムという説に疑問を感じていたが多少納得。

オーストラリアの彼とは気があった。

明日、一緒にショウレストラン「イズミール」にトップ歌手マナナの歌や

ベリーダンスを一緒に見に行く約束をする。

帰ろうとしてふいと奥の部屋に行ってみると玉突き場。

女性ふたりがやっていたが、一人がプロ級。すばらしい演技をする。

もうひとりは下手でもいい、黒い眉、濃い瞳、豊かな胸。うっとりするカスピ海美人。

しばし、両方の「特色」に見入っていたら、やってきた恋人の一言に怒って美人の方が、

キューを床に叩きつけてしまった。驚くほど激しいコーカサス魂!

 ” Smoke get in your eyes ”

 ナットキングコールが歌った名曲

  恋の炎に燃えているお方よ

      いずれ気づくでしょう

  炎が消えた時、かならず 

       煙が目にしみますよ


こんな燃えやすい人と恋する男は、目にしむどころか火傷しそう!


皆がかわりにやれと言うので、ひょんなきっかけで玉突きに参戦。

そばで見ていたひげずらのおじさんが、見かねてアドバイス。

とんでもないところに向かって玉を突けという。半信半疑で打ってみた。

コーナーのフェルト壁に当たった玉は回転しながら、別の玉にあたり、

当たった玉はころころと壁際をそうように回転しつつポケットへ。

打った本人がびっくり。

なるほど、壁際をそうように走らせる技があったのだ。

玉突きしてたら、見ていたカスピ海美人とも友達になった。

プロ級はこの店の女主人だった。

みんなの玉突きの華麗な姿をカメラに収めた。

「今度いつくるの?」とカスピ海美人に見つめられた。

どぎまぎしながら瞳の見とれていた。

そして、再会を約束して夜の舗道を歩いて帰る。

もう12時を回っていた。


いつもの角に仲良しのギター弾き語りのおじさんはいなかった。

昔ひとりで夜道を歩くときよく歌ったこのシャンソン

それを又歌いたくなるような夜だった。


   水と情けは 流れてゆれて

     末はどこかで 消えるものなの

   遠い明かりも 静かに消えた

     今夜はこれで お別れしましょう

  夜明け星 おやすみね


 今日の一句

 語りたき思い残して春暮るる


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